研究室訪問:東大院理/地殻化学実験施設

皆さんこんにちは,GSWです。
さて,今回は研究室訪問のレポートです。

2022年9月17日,放射化学会第66回討論会の合間に,東京大学大学院理学系研究科 平田岳史先生の研究室に伺いました。
平田先生の研究グループでは,隕石や岩石に含まれる極微量元素の同位体分析を通じて,試料の起源や形成過程,年代の推定を行っています。
また近年は,生体中微量金属元素と生命現象との関わりについて解明する学問領域(メタロミクス)への応用も進められています。
これらの研究を支援する基盤技術として,平田先生らは質量分析法やレーザーアブレーション装置の開発にも積極的に携わっており,今回の研究室訪問では,研究に使用している最先端の分析装置の数々をご紹介頂きました。

平田先生の研究室がある化学東棟は東大本郷キャンパス最古の建物だそうで,竣工はなんと1916年。
関東大震災や東京大空襲を乗り越えた,100年以上の歴史がある建物なのです。
建物内に入ると,ところどころにクラシックな装飾に施されており,同行のKIMさんも「おしゃれ~!」と感嘆の声をあげていました。
まずは平田先生に福島のお土産(ゆべしラングドシャ)をお渡しして,その後は実験室へ。

ナノ粒子を分析中の学生さんとともにicpTOF(TOFWERK)の前にて。
撮影下手な私を見かねて,平田先生がかっこいい画角で撮って下さいました。
こちらの部屋にはFFFが2機種あり,それぞれの原理と特徴について教えて頂きました。

     

研究室で最も稼働しているという,Nu Plasma 2(Nu Instruments)を挟んでディスカッションする平田先生と高貝先生。
高速多点アブレーションが可能なJupiter(ThermoFisher)と併せて使うことが多いとのことで,Npさんも興味深々です。
周辺には自作のアブレーションセルがいくつもあり,日々改良を続けている様子が伺えました。

     

有機化合物イメージングのためのイオン源(この日は故障中)とレーザーアブレーション装置は自作。
接続されているのはSelexION(AB SCIEX)です。

これから稼働予定のIRIDIA(CETAC)は,vitesse(Nu Instruments)と接続するつもりとのこと。
この日はユーザートレーニングの真っ最中で,CETACの技術者が英語でレクを行っていました。
元素イメージングにかかる時間が従来よりも100倍速くなり,しかも全元素モニタリング可能ということで,「バケモノ」(平田先生談)のような性能を発揮してくれそうです。

実験室奥にある平田先生お気に入りの作業スペース。
真上には陽圧管理のための巨大なファン,すぐ後ろにはNeptune(ThermoFisher)がどっしり構えており,適度な閉鎖感が秘密基地っぽさを醸し出しています。

精密同位体分析をするためか,ホコリが装置周辺に滞留しないよう室内は陽圧状態に保たれており,実験室へ入室するときはスリッパへ履き替えるなど,コンタミ管理は高貝研よりも少しストイックです。
こういった文化の違いを体感できるのも研究室訪問のおもしろさですね。

質量分析装置とレーザーアブレーション装置の見本市のような研究室で,自作のレーザーアブレーション装置がまだまだたくさんありました。
いずれの装置も野心的な設計で,「分析化学が主役になる」という平田先生の言葉が反映されているように感じました。

平田先生,この度は見学を受け入れてくださりありがとうございました。
いつかこのようなすごい装置たちを扱えるよう,さらに精進したいと思います。

GSW