ドイツのステインハウザー研究室との共同研究の成果が、2021年3月12日のアメリカ化学会「Environmental Science & Technology」誌に論文が掲載されました。
4か国(ドイツ、日本、オーストリア、ウクライナ)の研究者が参画した研究成果となりました。
【DOI】https://doi.org/10.1021/acs.est.1c00180
【概要】この研究は,放射性セシウムが過去に世界中の様々な場所に降下しました。福島の事故では、放射性セシウム134と137が大きくトピックスされていますが、ウランの核反応によって生成する長寿命核分裂生成物である放射性セシウム135という核種も降下しています。
今回、世界中で放射性セシウム汚染が起きた地域の放射性セシウム135と137の比率を調べることで、どのような特徴があるのかを調べました。試料は、チェルノブイリ(ウクライナ)、福島(日本)、旧トリニティ実験所(アメリカ)、1960年代の人の肺組織の灰(オーストリア)、比較として標準試料の5種類をICP-MS(アジレント8900)で計測しました。その結果、135Cs/137Csの比率は、原子力発電所事故が起きた福島の試料 は(∼0.35)、チェルノブイリの試料 は(∼0.50)でした。その一方で、 1960年代の人の肺組織からは(1.9 ± 0.2)と高い比率が計測されました。逆にトリニティ実験所の試料は、非常に低い割合を示しました (<0.4)。これらの結果から、過去に137Csの高濃度のプルームが通過して、セシウムボールなどに中長期的に暴露されたのではないかと考えています。