修士課程で卒業した伊藤千尋さんの研究成果が、2020年12月15日のアメリカ化学会「Analytical Chemistry」誌に研究成果が論文掲載されるとともに、Supplementary Coverに選ばれました。
【DOI】https://doi.org/10.1021/acs.analchem.0c03673
【概要】この研究は,分析することが非常に難しい「難分析核種」のひとつとして知られている放射性ストロンチウム90(Sr-90)の分析方法に関するものです。
今回,表面電離型質量分析計(TIMS)という質量分析装置を利用することで,わずか1滴の試料量(1マイクロリットル)に含まれるSr-90を直接分析することに成功しました。TIMSは,これまで「同位体比」,つまり,同位体が存在する比率を測定する装置として知られており,「絶対量」を直接計測することはできませんでした。さらに,自然界には,Sr-90と同じ質量をもつジルコニウム(Zr-90)が豊富に存在するため,質量分析計で直接分析することは不可能と考えられてきました。今回,ZrとSrの表面電離温度の違いを利用し,また,同位体希釈法とファラデーの法則を利用することで,前処理することなく1滴の試料に含まれるSr-90を計測できました。この論文では,涙,唾液,まつ毛などに付着したSr-90をモデル試料として計測することに成功しています。
【備考】この研究は、Anal.Chem誌 2020年 92巻におけるSupplementary Coverに選ばれてハイライトされました。