アメリカ化学会「Analytical Chemistry」誌に放射性ストロンチウム分析法に関する論文がハイライト・掲載されました

修士課程で卒業した伊藤千尋さんの研究成果が、2020年12月15日のアメリカ化学会「Analytical Chemistry」誌に研究成果が論文掲載されるとともに、Supplementary Coverに選ばれました。

【著者/論文誌名】C. Ito, R. Shimode, T. Miyazaki, S. Wakaki, K. Suzuki, Y. Takagai*, Analytical Chemistry, 2020, 92(24), 16058–16065.

【タイトル】Isotope Dilution–Total Evaporation–Thermal Ionization Mass Spectrometric Direct Determination of Radioactive Strontium-90 in Microdrop Samples

【DOI】https://doi.org/10.1021/acs.analchem.0c03673

【概要】この研究は,分析することが非常に難しい「難分析核種」のひとつとして知られている放射性ストロンチウム90(Sr-90)の分析方法に関するものです。

今回,表面電離型質量分析計(TIMS)という質量分析装置を利用することで,わずか1滴の試料量(1マイクロリットル)に含まれるSr-90を直接分析することに成功しました。TIMSは,これまで「同位体比」,つまり,同位体が存在する比率を測定する装置として知られており,「絶対量」を直接計測することはできませんでした。さらに,自然界には,Sr-90と同じ質量をもつジルコニウム(Zr-90)が豊富に存在するため,質量分析計で直接分析することは不可能と考えられてきました。今回,ZrとSrの表面電離温度の違いを利用し,また,同位体希釈法とファラデーの法則を利用することで,前処理することなく1滴の試料に含まれるSr-90を計測できました。この論文では,涙,唾液,まつ毛などに付着したSr-90をモデル試料として計測することに成功しています。

【備考】この研究は、Anal.Chem誌 2020年 92巻におけるSupplementary Coverに選ばれてハイライトされました。