Springer社「Environmental Chemistry Letters誌」に五色沼に存在するユニークな形状の天然ナノ粒子についての論文がオンライン掲載されました。
【著者/論文誌名】 Y. Takagai, R. Abe, A, Endo, A. Yokoyama, M. Konno, Environmental Chemistry Letters, 14(4), 565-569 (2016).
【タイトル】“Unique aluminosilicate-based natural nanoparticles in the volcanogenic Goshiki-numa pond”.
【DOI】 DOI: 10.1007/s10311-016-0592-0
五色沼湖沼群は,湖面が様々な色調を呈し,風光明媚な場所であることから福島県を代表する景勝地として知られています。五色沼湖沼群は湖沼ごとに,青色,赤色,緑色など独特の色彩が観察されます。その中でも,独特の美しい青色に呈する要因は,長年,観光客だけでなく多くの人々の興味の対象でした。これらの湖沼(毘沙門沼,青沼,弁天沼,るり沼)は,日中が最も鮮やかに見えること,また水中に銅イオンや青色色
素が溶解していないことから,青く見える要因は湖沼中のコロイド粒子による光の散乱と考えられてきました。これまで,この微粒子をアロフェンと指摘されてきましたが,五色沼湖沼群で微粒子がどのような粒子径,及び,形態で存在しているのか,さらに,散乱に寄与しているかに関しては示されていませんでした。
本研究では,五色沼湖沼群を採水して,特徴的なナノ微粒子を発見(採取)し,その粒子形状やその元素組成ついて様々な分析装置を使用して調査しました。
今回の研究で,この湖水に含まれる微粒子は,形状が円筒状で,外径が約40 nm,長さ約70 nm,円筒の中心に孔径30 nmの細孔を有する微粒子であることがわかりました。
また.非結晶性を示すケイ酸アルミニウムで構成される微粒子で,アルミニウムとケイ素の比が2:1でした。ケイ酸アルミニウム微粒子では,イモゴライトやアロフェン,ハロイサイトなどの天然化合物が知られているが,いずれも粘土質に含まれるものでした。今回,初めて,水中に浮遊するコロイド上のナノ微粒子の形状や大きさ,X線回折パターン,赤外線吸収スペクトルなどより,この化合物は異なる新しい種類の微粒子である可能性があることが分かりました。